フリーランスなら知っておくべき!「源泉徴収」の基礎知識
源泉徴収とは、事業者が給与や報酬を支払う際に、金額に応じて所得税を差し引き、税金を仮払いする制度のこと。
会社員の場合、会社が給与から源泉徴収を行い、年末に一年の収入が確定した時点で払いすぎた税金の返還などを調整する「年末調整」が行われます。つまり、会社員ならば払いすぎた税金が勝手に返ってくるということ。
では、自ら確定申告を行い、一年分の所得を計上して税金を確定するフリーランスはどうでしょう。
フリーランスは注意が必要!源泉徴収される仕事とされない仕事がある理由
源泉徴収が必要な業務は、法律で細かく定められています。
法律で定められている業務以外については、源泉徴収されるかどうかは取引先の判断に委ねられることになるので、複数の取引先と仕事をするフリーランスは、源泉徴収される仕事とされない仕事が混在することになるのです。
フリーランスは、どの案件でどのくらいの金額が源泉徴収され、税金を前払いしているのかを把握し、確定申告に備える必要がありますね。
「源泉徴収票」と「支払調書」の違いって?
この二つの大きな違いは、下記の通りです。
源泉徴収票とは?
事業主が従業員に源泉徴収額を知らせるためのもの
支払調書とは?
事業主が税務署に個人事業主への支払いを報告するためのもの
なお、源泉徴収票は支払い者への発行義務があるのに対し、支払調書は報酬を支払ったフリーランスに交付する義務はありません。
「支払調書」がなくても確定申告はできる?税金は還付される?
多くのフリーランスは、確定申告時に支払調書の添付が必要であると考えています。しかし、実はこの支払調書、企業側は支払先へ発行する義務はない書類です。
受け取れない書類は提出できないので、当然、確定申告で支払調書を添付する義務もありません。支払調書がなくても、税金の還付申告は可能なのです。
「還付申告」と「還付金」について知ろう!
そもそもフリーランスが行う確定申告とは、1年間の売り上げから経費や控除を差し引いた「所得」に対する所得税を納付するための作業です。
源泉徴収はクライアントによって事前に天引きされているため、還付申告をすることで払い過ぎてしまった税金(還付金)を受け取ることができます。
「支払調書」がない場合の確定申告はどうする?
支払調書の添付義務がないとはいえ、確定申告で「還付申告」する場合は源泉収額の転記が必須です。
源泉徴収票や支払調書がない場合、自分で税率計算をして源泉徴収額を求めることは可能ですが、1年分の収入の税率を出すのはなかなかの大仕事。下記ポイントを参考にしてみてください。
源泉徴収される仕事とされない仕事、どんな基準で決まっているの?
フリーランスの仕事では、源泉徴収の対象になるものとならないものがあります。対象となるのは、所得税法第204条1項1号〜8号に定められた8種類の業務に関する報酬になります。
「源泉徴収対象に当たる8種類の業務」をチェック
個人へに支払う報酬のうち、源泉徴収対象に当たる8種類の業務は次のように定められています。
- 原稿料や講演料、デザイン料等
- 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
- 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬”
- プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
- 芸能人や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
- ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
- プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
- 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
この中で、一般的に「フリーランス」と呼ばれる職種に当てはまるのは、1の「原稿料や講演料、デザイン料等」になります。
また、こうした業務に関わる職種として、ライターやデザイナーなどが挙げられますが、ここに入らないフリーランスのエンジニアなどでも、デザインや執筆など、仕事の内容によっては源泉徴収が発生します。
「この仕事、源泉徴収されてるの?」判断のポイントとは
自分の仕事の源泉徴収対象か確認する場合、報酬を見ることで源泉徴収の有無を判断することができます。
収入が満額支払われている場合、あらかじめ所得税や復興特別所得税が引かれていないことがわかるので、源泉徴収はされていません。
源泉徴収の計算方法をマスターしよう
支払調書が送られてこないなどの理由で、源泉徴収を自分で計算する人は、収入が100万円を超えるかどうかで計算式が変わることに注意してください。
支払われる金額が100万円以下の場合
支払われる報酬が100万円以下の場合、「支払われる額×10.21%」が源泉徴収される金額になります。
支払われる金額が100万円以上のの場合
支払われる金額が100万円以上の場合、「(支払われる額-100万円)×20.42%」が源泉徴収される金額になります。
復興特別所得税とは?源泉徴収の内訳
復興特別所得税とは?
東日本大震災の復興の財源となる税金のこと。2037年まで、基本所得税額に2.1%を乗じて課税されます。
復興特別所得税も源泉徴収の対象となり、例えば100万円以下の報酬であれば、「支払われる額×(所得税10%+復興特別所得税0.21%)」という内訳で徴収されています。
源泉徴収の納付方法は?
源泉徴収の納付には、「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」という用紙を使用します。この用紙は、税務署で受け取るほか、希望すれば郵送してもらうことが可能です。
納付書を用意したら、支払い年月日や徴収義務者(報酬を支払った人)、所轄の税務署名、働いた人員数などのほか、源泉徴収の合計金額を「本税」、延滞税などがある場合は、本税と合算した「合計額」を記入します。詳しい記入方法は、国税庁のホームページで確認しましょう。
「所得税徴収高計算書」の種類について
「所得税徴収高計算書」には2種類の用紙が存在することを頭に入れておきましょう。
2種類の用紙がある所得税徴収高計算書
ひとつは、支払いの翌月に納付する「一般分」、もうひとつは、年に二回、まとめて納付ができる「納期特例分」です。
このうち、「納期特例分」は給与を支払う従業員が10人未満の源泉徴収義務者が対象になります。対象者は税務署に申請書を提出することで特例を受けることができます。
源泉徴収の納付期限は?
源泉徴収は、「一般分」の場合、支払があった月の翌月10日までに納付します。
一方、年二回にまとめて納付ができる「納期特例分」の場合は、その年の1月から6月までの源泉徴収分を7月10日まで。7月から12月までに源泉徴収した分を翌年1月20日までにそれぞれ納付します。
納付期限の注意点
実は、源泉徴収の納付期限を過ぎた場合、延滞税を支払わなくてななりません。
延滞税は、納付期限の翌日から納付する日までの日数に応じて加算されていきます。もしも、「忙しくて納付期限を忘れてしまった!」というときは、できるだけ早めに納付の手続きを行い、延滞税を最小限に抑えましょう。
請求書を作成する時の3つのポイント
フリーランスが請求書を発行する際には、なんとなくテンプレートを使用することが多いかもしれません。
しかし、源泉徴収を自分できちんと把握するために、いくつか注意したいポイントがあります。テンプレートを使っている人も、今一度このポイントを確認してみてください。
ポイント①請求書には源泉徴収額を記載しよう!
請求書を発行する場合、基本的にはフリーランス側で源泉徴収額を計算し、その額を明記しておきましょう。こうすることで、帳簿付けの際に請求書を集めただけで、どの仕事でどれだけの源泉徴収がされたのかが一目瞭然になります。
また、デキるフリーランスは、取引相手にとって親切なやり取りをするものです。これは請求書の作成でも言えること。クライアントが源泉徴収額を計算する手間を取り除く一手間で、「この人は気が利いてるな」と思わせらればこちらのもの。
ポイント②請求書は「税抜き」表示にした方がスムーズ
請求書では、請求金額を「税別」で記載しましょう。これは、報酬に消費税を含んでしまうと、請求書の上では報酬が増えたことになり、その分源泉徴収も増えてしまうためです。
ポイント③振込手数料の記載方法に注意!
報酬の振り込み手数料は、事前にどちらが負担するのかをクライアントと確認し、トラブルを避けるためにも請求書に明記しましょう。
この際、受取り側であるフリーランスが負担する場合は、請求額から手数料を引いた額を記載します。
【番外編】フリーランスが外注するケース!源泉徴収の手続きが発生する場合と納付方法
自分が発注者としてフリーランスに外注する場合、報酬を支払うにあたって源泉徴収の手続きが必要になります。
フリーランスが源泉徴収をしなくてはいけないケース
- 2人以上の従業員または専従者を雇って給料支払いが発生した場合
- ホステス等への報酬・料金の支払い
デザイナーやエンジニアなどのフリーランスで、「事務作業などのため、パートや家族に給与を支払っている」という場合は(1)に当たります。
ライターやデザイナーへの外注など、源泉徴収の対象となる場合に備えて、手続き方法を知っておきましょう。
源泉徴収義務者ではないフリーランスの外注について
源泉徴収義務者でないフリーランスがフリーランスに仕事を発注する場合、報酬の支払い時に10.21%を源泉徴収せずに入金します。もし、外注先から、源泉徴収金額がわかるものを依頼された場合、支払った報酬と、源泉徴収税額を0円と記載した書類を発行しましょう。
ちなみに、報酬が5万円以下の場合は源泉徴収義務者でも支払い調書発行の義務はありません。
フリーランスの源泉徴収まとめ
源泉徴収が必要な報酬
- 原稿料や講演料、デザイン料等
- 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
- 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
- プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
- 芸能人や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
- ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
- プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
- 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
源泉徴収の計算方法
- 支払われる報酬が100万円以下の場合「支払われる額×10.21%」
- 支払われる金額が100万円以上の場合「(支払われる額-100万円)×20.42%」
フリーランスの源泉徴収の手続き
- 源泉徴収の納付には「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」を使用
- 「一般分」の源泉徴収は、支払があった月の翌月10日までに納付
- 「納期特例分」 の源泉徴収は その年の1月から6月までの源泉徴収分を7月10日まで。7月から12月までに源泉徴収した分を翌年1月20日までにそれぞれ納付
- 所得税徴収高計算書を記入したら、納付書として現金とともに納付
- 納付の窓口は、税務署、郵便局、銀行、信用金庫
請求書のチェックリスト
- 請求書には源泉徴収額を記載
- 請求書は「税抜き」表示がベター
- 振り込み手数料はどちらが負担するのかを確認